03 April 四月三日 ぜひ四月一日の記事を読んでからお読みください。○ウン、前回の投稿からモウ二日だ。さっそく一つ目の次回公演をより楽しむための鍵の話をしよう。今回の公演には原作がある。稀代の小説家、夢野久作の『少女地獄』より「何んでも無い」という短編小説を用いている。この作品に夢野久作が用いた手法が今回の公演の出発点なのだ。○書簡体文学というジャンルがある。馴染みのない方にはイメージつかないかもしれないが、アハハ、なんてことはない手紙のことだ。この原作であるところの「何んでも無い」は、その全てが臼杵利平(演、栁沼佑樹)が白鷹秀麿(演、渡辺ヒロユキ)に宛てた手紙なのだ。いわゆる地の文など一文字もないぞ。それは私にとって、そして公演を観に来てくれるあなたにとって、楽しい事実だ。手紙を演劇に、ステキに愉快な試みだ。○夢野久作は多才な人物であるが、そのひとつの側面に探偵小説家というものがある。今回の「何んでも無い」が探偵小説かどうかと聞かれれば、アハハもちろんノーだ。しかし、怪奇色強い彼の小説が表題通り、何でも無いワケが無いのだと私は感じたワケだ。モット私が素直なら、この公演は無かっただろうに。○ミステリーフリークには今更な話をしよう。探偵小説には守らなければならないと言われている二十の原則がある。読者に分かるよう小説の中に全ての手掛かりを残し、非科学的な殺人や推理を用いてはならないなどのものであるが、詳しく知りたい人は調べてみるとよい。「ありふれてつまらないから」という理由で採用されているものもあるぞ。マア、これを破った例外は山ほどあるけどね。○そういった前提の中で、"臼杵は「姫草ユリ子の自殺」について語る。″ことを、私は揺るぎの無い事実であると認めた。もし、彼を探偵とするのなら、あなたは彼の推理を聞くことになるのだ。あなたが"何が起きたか"を知るに必要な情報を、偽ることなくあなたの前に提示してくれることだろう。ただ、問題はあなたが彼の語りを信用できるかだ。もしかすると、何かの真実を隠すために、彼(もしくは、演出である私)がミスリードをあなたに誘うかもしれない。しかし、安心していいぞ。私はそれを判断するのに必要な手掛かりを、あなたの前に提示することを約束しようじゃあないか。そういう意味で、今回の公演はミステリーな要素が多分にある。お楽しみに。 PR